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「ヘッポコバサーさ~ん」

待合室に看護婦さんの呼び声が響く。

「いよいよか…」読んでいたバス釣りの雑誌を閉じ、胸の不安を悟られないように、ウメはゆっくりと立ち上がる。手術室は3階か4階にあるらしく、その階まで、看護婦さんと二人エレベーターに乗った。

「気分悪くないですか?」
50歳は過ぎているであろうその看護婦さんの眉間には、深く数本の皺が刻まれており、今まで経験してきた数々の修羅場と多くの患者とのやり取りを連想させた。

「大丈夫です」
同時にエレベータのドアが開いた。看護婦さんに続いて、長い廊下を歩く。しばらくするともう一つの大きなドアが見えた。

【手術室】と書かれたプレートがぶら下がったドアの先は、ウメが想像していたような「手術室」ではなく、履いていた靴をスリッパに履き替える靴箱と、貴重品を入れるロッカーが9つ並んだ長い廊下であった。

「貴重品はそのロッカーに入れておいてくださいね」
看護婦さんの言葉に、とりあえず「ラッキー“7”」を選んだ。素早くロッカーに鍵をかけ、そのまま廊下で緑色の手術着に着替えた。

廊下の先にはいくつかのオペルームが左右に並んでおり、それぞれの真ん中には、大きなライトと手術台がある。ウメが通されたのは、左側の手前から2番目。オペルーム名「富士」であった(嘘)

++++++++++++++

「よろしくお願いします」
オペ室では、既に何人かの助手が手術の準備を始めていた。
助手や医師との挨拶は、普段の健康診断となんら変わりない。ただ、健康診断と違うのは、ウメが寝かされたのは周囲を精密機械で囲まれた手術台だったって事ぐらいである。

手術台には両手をそれぞれに乗せる事ができる補助台が付いており、完全な大の字ではないが、少し脇を開いた状態でそれぞれの腕を置けるようになっていた。

「気分悪くないですか?」
担当の村上先生(仮名)が入ってきた。補助は男2名女2名の4名。ほとんどが20代後半から30代というところで、手術前にしては不謹慎ではないか?と思えるほど、和気藹々と話をしている。

「あ、○○さん、それは僕の仕事ですよ~(笑)」
「あ、もう××終わったんですか~?(笑)」
「ライト持ってきま~す」
などなど。

そして、その声と並行して、左手には心拍計と点滴の針がささり、胸元には心電図を測る機械、そして目的の右手には肩口に部分麻酔を右手だけに留めておくためのベルト状の圧迫機、手の甲には麻酔を注入するための針が刺された。

「あかん、膨れてきた…」
右手に麻酔用の針を刺そうとしていた村上先生の声であった。
点滴の針などは、上手く血管に入らないと、その周囲に点滴液が漏れてしまいその部位が膨れてしまう。

あ、注射下手な先生やな…。
以前、同様の経験をした事のあるウメは心の中で呟いた。風邪で点滴を処方されたとき、あまり上手くない看護士さんのせいで点滴液が注射箇所周辺に漏れ出し、左手全体がパンパンに膨れてしまった事があったのだ。

「あかんかってん」
「じゃあ、ここどうですか?」
「なかなか出てけえへんな~」
「ここでもいいんじゃないですか?」
「ちょっと細いな~」
先生と助手の話し声が聞こえる。だが、右手で何が起こってるかは見えない。ほんのさっき、肩口から先を見えないように簡易カーテンで遮断されてしまったからだ。

先生が右手の所々を触り、麻酔用の針を刺す場所を探っている…。その事だけが右手の感覚を通して伝わってくるだけである。そして、二度目の針が手の甲に刺さり、麻酔の注入が開始された。「ピッ、ピッ、ピッ」左の頭側にあるモニターが心拍数と血圧を表示する。


「どうですか?まだ痛み感じますか?」
麻酔の効果を確かめるため、先生が問いかける。確かに、右手が痺れてきている。でも、多少軽くなったにせよ、触られている感覚はあるし、右手親指の付け根あたりに突き指独特の鈍い痛みがあるのがわかる。


「すみません…まだ痛みます…」

「そうですか。では、局部麻酔10cc用意して。」
「○○でよろしいですか?」
「いや、もういきなり全部行きます。」
その後、親指周辺に何箇所か針が突き刺さる感覚があった。針が刺さるたび、痛みは鈍くなっていく…。

そして「よろしくおねがいします」の声と共に手術が開始したのであった。時間は16時10分を過ぎようとしていた…。

(続く…難しいな~笑)
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